チャンネルデバイダ:PHASE、DELAY、パラメターEQによる調整


 スピーカーを接続すると固有の位相特性が加算されデバイダ本来の特性からずれが生じたり、スピーカーの構造や取り付け方法により振動版の位置が前後にずれることがある。

その為、デジタルチャンネルデバイダ―には「PHASE・位相」や「DELAY・遅延」を調整する機能がある。但し、正しい方法で対処しないと必要な特性に調整出来ないこともある。

 パラメーターイコライザーの機能も付いているので基本的な特性も測定した。


Ⅰ.位相調整機能の使用について


  スピーカー固有の位相のずれを位相調整機能を使用した場合、クロスオーバーでの位相は合わせられるがその上の周波数での位相の変化が大きくなり、周波数特性 にうねりを生じる恐れがある。

 

 (クロスオーバー周波数でのスピーカーユニットの位相が45度又は90度程度の場合は、相対する下の帯域のフィルターの次数を1 次又は2次上げることでクロスオーバー周波数付近でも良好な周波数特性を得ることが出来る。

 これは一般的に位相がずれている時は、周波数特性も相応に低下しており、SPを接続した時の位相と周波数特性がフィルターの次 数が1次又は2次上がった特性に近似しているためである。)

1.位相調整機能による位相特性の変化

位相調整機能による位相特性

オーバー周波数:303Hz

青線(上側):6dB/oct + SP(45度)の近似位相曲線

青線(下側):12dB/octの位相曲線

黒線:6dB/octの位相曲線

赤線:6dB/octの位相曲線にクロスオーバー周波数で位相調整45度を加えた曲線、クロスオーバー以上で位相 のずれが大きくなっていく。赤線の位相曲線が青線(下側)から離れていくので、合成時の周波数特性にうねりが生じる。


2.位相調整機能による周波数特性の変化

位相調整機能による周波数特性

青線:チャンデバフィル ター設定 6/6dB/oct:上の帯域SP位相45度、下の帯域位相補正45度の周波数特性のシュミレーション

上記1項の位相特性から分かる様にクロスオーバー周波数より上の帯域まで影響が出る。

フィルターの次数を上げていけば下記の赤線の様に影響は少なくなっていく。

赤線:チャンデバフィルター設定 18/18dB/oct:上と同一

このようにチャンデバのフィルターの次数が小さい場合は周波数特性のうねりが大きい。


3.位相調整機能まとめ

 以上の如くSPの位相が45度や90度程度であれば、位相調整機能による補正よりチャンデバの下の帯域の次数を上げたほうが周波数特性は良 好である。

 では例えば、45度の半分以下の場合はどのような対応が望ましいのだろう。

1.何もしないのも一つの方法。(SPの周波数特性も山谷あり完全ではないので)

2.位相調整機能を使用し補正する。なお且つフィルタの次数の大きいところで使用すれば周波数特性のうねりはかなり小さく調整で きると思われる。


Ⅱ.ホーンスピーカーとタイムアライメント、DELAY TIME設定


 コーンタイプとホーンタイプを同一バッフル面に取り付けることは多いし、上に置くにしてもホーンが出っ張るのは困る場合が多い。

1.DELAY TIME設定

 コーンタイプのSPの帯域にDELAY TIMEを設定する。

コーンタイプとホーンタイプの振動版の前後の位置の差がたとえば25cmの場合

DELAY TIME=25/345/100×1000=0.724ms を設定すれば良い。*(345は室温での音速[m])

2.半波長分を逆相で接続する場合

 クロスオーバー周波数で半波長分の位置のずれの場合位相が逆になるので、逆接続することで対応する記事を見ますが、付近の周波数 全てで逆相にはならないので周波数特性に山谷を生じるので注意が必要である。

半波長分逆相接続特性

青線:6/6dB/oct:Butterworth

緑線:12/12dB/oct:L-R

赤線:24/24dB/oct:L-R

クロスオーバー周波数:1kH

ユニット間の位置の差:17.3cm(1kHの波長の半分)

低次数の設定ではやはり周波数特性のうねりが大きい、24/24dB/octで実用領域


3.ホーンタイプアライメントのまとめ

3-1.振動版前後の位置の差がある場合は「DELAY TIME」を設定することでその帯域内で同じ時間差(位置の差)として完全に調整できる。

3-2.ある周波数(例えばクロスオーバー周波数)で半波長分の位相差でも周波数が変われば半波長分ではなく なるので、逆相接続しても周波数特性にうねりが生じる。

特に次数の低いフィルタの場合は顕著に表れる。


パラメーターイコライザー特性


 このデジタルチャンネルデバイダ―にはパラメーターEQに機能が付いている。

設定できる数(周波数ポイント)はかなり多い。

パラメーターEQ 特性(画面はクリックで拡大します)

パラメーターEQ 周波数特性
パラメーターEQ 周波数特性
パラメーターEQ 位相特性
パラメーターEQ 位相特性
パラメーターEQ 群遅延特性
パラメーターEQ 群遅延特性


*1.2012.07.10 UP