ディジタルチャンネルデバイダー単独の電気特性に、固有の周波数位相特性を持つスピーカーが接続された時の合成の特性を知り対応を行う。
また位相の扱いを分かり易くするためベクトル図による解析、計算など。
1-1. スコーカーの代表的例としてコーンタイプ、ホーンタイプの周波数特性と位相特性
12cmコーンタイプ小型密閉箱
周波数特性から300Hz以上で使いたい
この時300Hzで位相は45~50度程度
周波数特性も一次のフィルターに近い
アルテック (A5) マルチセルラーホーン
600Hz、800Hz切り替えで使用されている
この時位相はほぼ 90度、周波数特性も2次のフィルターに近い
1-2. チャンネルデバイダー + 12㎝コーンSP 合成位相特性
チャンネルデバイダー(クロスオーバー周波数303Hzに設定)に上記12㎝コーンタイプを接続した場合
青線:チャンネルデバイダー単独、
6dB/oct(1次)、45度/303Hz
黒線:チャンネルデバイダー単独、
12dB/oct(2次)、90度/303Hz
緑線:スピーカー単独、45~50度/303Hz
赤線:チャンネルデバイダー6dB/oct
+スピーカー、90~95度/303Hz
この様にSPの位相が加算される
この事例の場合SP低域サイドのカットオフ周波数を300Hz付近に設定した場合は、周波数と位相(45度)は一次のフィルターに近い。
従ってクロスオーバー周波数によっては1次のフィルターとスピーカーの1次分が加算され、クロスオーバー周波数付近では2 次のフィルターの特性に近い。
(*注:SPの位相特性:4kHz以上は正確ではありません、Pre Delayの設定がずれていました)
1-3. ホーンタイプスコーカー接続の場合
1-1.の特性図から600~800Hz付近のクロスオーバー周波数で使用するとSP単独位相が約90度ずれて 2次の フィルターに相当す る。
クロスオーバー周波数でのSPの位相次第ではチャンネルデバイダの電気的設定を変える必要が生じる場合 もある。考え方としては
① SPの位相の変化が少ない帯域を使用:3CH程度ではかなり難しい
② 相対する帯域のフィルターの次数を上げる:個人的には推薦する方法
③ フィルタの次数の大きいものを使用し影響を少なくする(24or48dB/oct)
④ PHASE(位相シフタ)で補正する:副作用あり(F特のうねりが大きい)
⑤ SPの位置又はDELAYで位相を補正する:副作用あり(F特のうねりが大きい)
(SP振動版の位置をDELAYで補正しタイムアライメントを行うのは正しい方法)
①~③項については「マルチアンプ事例」を参照ください
④⑤については次のページを参照ください
クロ スオーバー周波数でのスピーカーユニットの位相が45度又は90度程度の場合は、相対する下の帯域のフィル ターの次数を1次又は2次上げることでクロスオーバー周波数付近でも良好な周波数特性を得ることが出来る。 SPを接続した時の位相と周波数 特性がフィルターの次数が1次又は2次上がった特性に近似しているためである。 |
上記1項でSPを接続することでトータルの位相のずれが大きくなることが分かる。
この時信号レベルにどのくらいの影響が出るかベクトル図で解析する。
3-1.位相の扱い
3-2.スピーカーと接続した時の位相と信号レベル:ベクトル図解析
チャンネルデバイダーの設定: 300Hz 、6/6dB/oct
ウーハー:300Hzで位相0度(SPユニット測定データー参照)
スコーカー:300Hzで位相+45度(上記1-2.項参照)
外側の 円:半径、ュニット単位「1」の円
内側の円:信号レベル-3dB 半径「0.707」の円
●チャンンネルデバイダーのみ
緑線:下の帯域(6dB/oct) 位相-45度
信号レベル-3dB「0.707」
紫線:上の帯域(6dB/oct) 位相+45度
信号レベル-3dB「0.707」
赤線:位相差90度でベクトル加算され
位相0度 信号レベル0dB「1」で
設計通り
●ウーハー及びスコーカー接続
緑 線:ウーハー接続位相変わらず (-45度)
水色線:スコーカー接続、紫線に45度加算され(+90度)
青 線:緑線と水色線が位相差135度でベクトル加算され位相22.5度、信号レベル-5.3dB 「0.53」で
信号レベル(300Hz付近)の低下が大きい
●この状態でスコーカー側をチャンネルデバイダーで逆相接続(スコーカーのみを逆接続しても同じ)
緑 線:ウーハー加算、変わらず(-45度)
水色点線:水色線が逆相接続の為反転した(-90度)
黒 線:水色点線と緑線の位相差45度でベクトル加算され、位相-67.5度、
信号レベル約+2.2dB「約 1.3」で逆相接続では信号の低下は無く少し上がる。
このようにSPユニットの位相しだいでは正相か逆相接続かが変わることもある。
3-3. ベクトル図「Excel」による計算
2個の信号:(信号の大きさ:A、位相角:a)、(信号の大きさ:B、位相角b)
ベクトル加算した信号:(信号の大きさ:C、位相角:c)とする。
信号の大きさ(絶対値): C=|(A+B)cos((a-b)/2)| 、A=Bの時、ABが異なる時は近似値
信号の大きさdB表示:C”dB=20logC
加算後の位相角 :c はベクトル図から読み取ってください。
A,B,a,b はチャンネルデバイダーの設計から得られた値(4-1.項の表)
A,B:Butterworth タイプの時:0.707(-3dB)
Linkwitz-Liley タイプの時:0.5(-6dB)
EXCELでの計算結果
*5.2012.07.10 更新
*4.2012.04.19 SP接続時の位相特性図追加
*3.2012.02.29 追加修正
*2.2012.02.19 ベクトル図計算を追加
*1.2012.02.15 UP