高調波歪、混変調歪を測定し最適なユニットを選定する。
測定結果、手持ちのユニットでは、4 WAY SP にならざるを得ない。
チャンネルデバイダー「DCX2496」および AV AMP「 AVC1630」では 4 WAY AMP は構成できないので、「3 AMP駆動 4WAY SP」のハイブリット方式を検討する。
1.ユニットの高調波歪の測定、使用帯域の決定
測 定 法:正弦波STEPS
SPへの入力:2.83V 8オーム1Watt相当、ホーンタイプは音圧を合わせる(電気入力2.83Vの-11dB)
(音圧としては1Watt、1mでスペック上約90dB)
SP-MIC距離25cm(室内の影響を小さくするため)
目安は1%以下 (参照:オーディオ基本要件・特性:高調波歪の検知限界)
1-1.38cm ウーハー
400Hz以上の歪が大きい。エッジ共振も大きい
使用できるのは400Hz以下、クロスオーバーとして300~350Hz以下
*注:ロールエッジが破損したため不正規品のものに交換している。従って元特性は不明
1-2.12cm 中低域 コーンタイプ
低域クロス300Hz付近OK
高域2kHz付近、偶数奇数次歪共に検知限界程度とやや大きいので1.5kHz以下で使用
1-3.中高域 コンプレッションドライバー+ストレートホーン
800Hz以上、クロス1kHz以上
2kHz付近、偶数次歪はやや大きいが奇数次歪は小さい
但し高域不足(9kH以上は急激に低下)のためツイター追加必要
使用帯域の決定に当たり、参考までに次の2項で混変調歪についても測定を試みた。
2.ユニットの混変調歪の測定、使用帯域の決定
12cmコーンタイプを中高域まで使用したときとコンプレッションタイプを中高域に使用したときの音質の差は大きいように思う。特に明瞭度/透明感とスピード感に差があるように思う。何とかこの差を測定できないものだろうか。
混変調歪は振幅の非直線性によるものなので、高調波歪と同程度であるといわれていると思うが、コーン紙の分割振動やエッジ共振による歪の場合はどうなるだろう。
測定信号
2信号法:1kHz、3.15kHz
マルチトーン信号法
コーンタイプ 1Watt(2.83V/8Ω)
ホーンタイプは音圧で合わせる(電気入力は2.83Vの、ー11dB)
2-1.2信号法:1kHz、3.15kHz 混変調
12cmコーンSp
本信号とその高調波以外で本信号との差が50dB以内(歪率で0.3%以上)の数:8個
コンプレッションドライバ+ストレートホーン
同一条件での個数:1個
個数、レベル共に小さい
2-2.マルチトーン方式 混変調歪
12cmコーンSp
3~9kHzの間で本信号とレベル差35~45dB の高調波歪+混変調歪多数出現
ドライバー+ストレートホーン
コーンSPに比べ、高調波歪+混変調歪の
レベルは10dB近く低い
3.ユニットの使用帯域
高調波歪、混変調歪1%以下をとると
低音域:38cmコーンSP:使用周波数400Hz以下 クロス周波数300~350Hz
中低音域:12cmコーンSP:使用周波数300~1.5kHz クロス周波数300~350/1~1.5kHz
中高音域:ストレートホーン/コンプレッションドライバー:使用周波数800Hz~8kHz
クロス周波数 1~1.5kHz /高域はカット無し
高音域:8kHz以上にツイターの追加が必要
マルチアンプ、スピーカー①の事例の場合、12cmコーンスピーカーを300~4.5kHzに使用。構成は簡単であるが、中高域の明瞭度/透明感やスピード感に欠けるように感じる。
マルチアンプ、スピーカー②の事例の場合、38cmウーハーを750Hzまで使用している為か中低域の明瞭度に欠け、マルチセルラーホーンの違和感のある音(私の手持ちのユニットの場合で、私の個人の見解)が気になる。(のでホーンをストレートホーンに変える)
そこで手持ちのユニットを測定した結果「Ⅰ.項」のように「4 WAY SP」にする必要がある。
チャンネルデバイダ「DCX2496」AV AMP「AVC-1630」では4AMP構成に出来ないので3AMPで駆動する3AMP駆動4WAY SP構成とする
1.システム構成
2.使用ユニットとチャンネルデバイダーの設定
|
ユニット |
クロスオーバー周波数 |
フィルター |
信号レベル |
接続 |
低音域 |
38cmコーンSP |
上側:300Hz |
24dB L-R |
0dB |
正 |
中低音域 |
12cmコーンSP |
下側:300Hz 上側:1kHz |
18dB Butt+SP45度 24dB L-R |
0dB |
正 |
中高音域 |
1インチD +ストレートホーン |
下側:1kHz 上側:無し |
12dB L-R+SP90度 無し |
-5dB,-6dB |
注1 |
高音域 |
リボンTW |
下側:8kHz |
2.2μF |
-5dB |
注2 |
2-1.低音域と中低音域の設定調整
両SPの取り付け位置:コーン紙の頂点、又はバッフル面を合わせても、300Hzでの実効的な位置との差は±5cm程度であり、300Hzでの波長345/300=1.15m=115cmであり5cmの差は位相で360×5/115=16度以内、時間差は0.15msで実用上問題ないと思う。
フィルターの特性は「マルチアンプ、スピーカー①、や同②」で実験したようにSP位相(クロスオーバー周波数で)を加算して次数がほぼ同じほうがクロスオーバー周波数付近の周波数特性が滑らかになる。
2-2.中低音域と中高音域の設定調整
両SP取り付け位置:インパルス応答などで実効音源位置を合わせた場合は表のフィルター特性の場合、両ユニットは同相接続。
ストレートホーンの開口面(バッフル面)を合わせる場合:このユニットの開口面からダイアフラム面の距離が16cm、これは1kHzの音波の波長345/1000=0.345m=34.5cmの約半分であり、開口面でダイアフラムに対して180度ずれており、逆相となっているので、4次以上のフィルターの場合はこのSPを逆相接続すれば両ユニット間の位相差が無くなりほぼ滑らかな周波数特性が得られる。(但しチャンデバのフィルターを 1次6dB/oct や 2次12dB/oct にした場合は周波数特性にうねりが生じる。チャンネルデバイダー:PHASE, DELAY を参照ください)
中高音域の高域エンドはフィルター無し。
音圧レベルは能率が良く11dB低下させる。ツイターの能率の関係で、チャンネルデバイダで5dB、SP回路部抵抗アッテネーターで6dB低下させる。
2-3.中高音域と高音域の設定調整
両ユニットの取り付け位置:両ユニットのダイアフラムの位置を合わせ、位置を微調整し周波数特性にディップの生じない位置に調整する。接続は微調整により正、逆どちらも大差ない。
バッフル面を合わせると、16cmの差は8kHzで345/8000=0.043m=4.3cm の約4倍で、位相が4回転しており、8kHz での位相を合わせてもその周辺での位相のずれが大きく、周波数特性に多くのディップがでるので適切でないと思う。
もっともこの差の音質はそれほど差は無いのかな???
フィルターは2.2μFのみ。周波数特性のつながりが悪い場合はこの値を変える必要があるかもしれない。その場合は又信号レベルの再設定も必要。
3.SPシステムの特性
3-1.SPシステムの総合周波数特性
測定法 :PINK NOISE、1/6 oct スムージング
MIC-SP 距離2m 試聴ポイント
3-1.SPシステムの総合周波数特性
測定法 :PINK NOISE、1/6 oct スムージング
MIC-SP 距離2m 試聴ポイント
3-2.SPシステム高調波歪特性
測定法: 正弦波STEPS
SP入力 2.82V 1Watt/8オーム相当
SP-MIC 25cm (室内影響軽減のため)
SP配列 測定のため特別配列、(三角形配列、中低域SP、中高域SPの中間にMIC)
(ツイター無し) 高調波歪:-40dB以下1%以下
3-3.高調波歪+混変調歪
測定法: SP入力 マルチトーン全帯域合計 2.82V 1Watt/8オーム相当
各帯域ごとの入力は3-2項より低くなる、その他 3-2.項と同一
高調波歪、混変調歪:-45dB以下 ほぼ測定系ノイズレベル以下
まとめ
SPシステムとして周波数特性のバランスも良く、高調波歪+混変調歪1%以下を達成できた。
試聴(個人的な感想):マルチアンプ、スピーカー①、②、③の事例の中では1番良い。
低音域の音程の動きが良く分る、中高音域の明瞭度、透明感に優れていると思う。
スピーカーユニットの配列
4個のユニットを使用するので配列には悩む。
特に耳の感度の良い所、このシステムの事例では、中低域12cmSPと中高域ストレートホーンはインライン(垂直)配置が良い結果が得られる。
左右対称で水平に配置すると、試聴ポイント付近で頭を左右に移動すると、各ユニットから耳までの距離が左右で逆方向に変化し、左右の特性に差が生じ定位が不安定に変化する。
インラインの場合、頭を上下、左右に移動させても、左右の特性の差は生じない為だろう。
*1.2012.05.08 UP
履歴
2021.02.27:一部修正
2012.05.08:初稿